「被疑者ノート」の威力
先の3月終わり頃に大阪弁護士会で行われた経験交流会「自白強要といかに闘うか~『被疑者ノート』の実践~」でも被疑者ノートの活用により、被疑者の側から取調べの可視化を行う被疑者ノートの実践についての報告・シンポジウムが行われた。そこでも、被疑者ノートが現時点で録画録音による取調べ可視化の代替的な役割を果たしており、その証拠としても相当な威力があることが明らかになった。
本日の下記記事も「被疑者ノート」が取調べ過程の可視化(立証)に大きな威力があるのを明らかにしている。
取り調べで暴行?「被疑者ノート」を証拠採用…大阪地裁 : 社会 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
大阪市北区のマンションで2004年12月、女性を刺殺したとして殺人罪に問われた無職黒木健司被告(57)について、大阪地裁が、取り調べの際に警察官から暴行を受けたとする「被疑者ノート」を証拠採用し、犯行状況を“自白”した調書の採用を却下していたことがわかった。
黒木被告は女性を刺した事実は認めたが、「当時、飲酒による意識障害で心神喪失状態だった」と無罪を主張。捜査段階で行われた精神鑑定では、「酔っていたが、意識障害はなく責任能力はある」と判定されたが、供述の証拠能力が否定されたことなどから、地裁は再鑑定を決定した。
黒木被告は04年12月19日、派遣型風俗店の女性(当時21歳)をマンション自室に呼び、ナイフで刺殺したとして逮捕、起訴された。
弁護人の崎原卓弁護士によると、黒木被告はアルコール依存症で、犯行時、多量に飲酒していて断片的な記憶しかなく「刺したが、理由や犯行状況は覚えていない」と供述。しかし逮捕から約2週間後の05年1月11日、大阪府警の取調官から暴行され、記憶にないのに女性を自室に呼んだ状況などを話したという。
「髪を持って引きずられ、土下座の姿勢で靴で頭を10回、顔を1回けられ、唇が切れてはれた」。状況をノートに書かせ、顔などを撮影した写真と一緒に添付し証拠保全を地裁に請求。
検察側は「自分で机に顔を打ち付けた」と主張したが、地裁は「特に信用性が高い」としノートを証拠採用。その日の供述調書2通は「任意性に疑問がある」として却下した。
(2007年5月14日14時31分 読売新聞)
そして、上記記事から窺えるのは、取調べの過程において取調べ担当警察官による相当程度の暴行等が行われたことである。先の志布志事件の元被告たちが語るところと変わらない。上記事件でも、録画(録音)による取調べの可視化がなされていたら、取調べ担当警察官による自白の強要があったのは一目瞭然であった。録画(録音)による取調べの可視化の必要性・有効性・重要性を容易に理解できよう。
これが実現されていない現時点でも「被疑者ノート」がブラックボックスとなっている取調室に一筋の光を当てることができるを、上記事案は示している。
「被疑者ノート」の弁護実践には取調べ過程の可視化機能以外に独自の意義・機能があると考えられるが、いずれにせよ、録画(録音)による取調べ可視化を推進するためには「被疑者ノート」の弁護実践が重要である。
おそらくこの事件も、録画(録音)による取調べ全過程の可視化が行われておればはっきり決着がついたと思われる。
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