取調べ可視化 最前線

鹿児島県議選違反事件が11月7日結審

 報道によれば、11月7日、鹿児島地裁で弁護側の弁論が行われ、被告人らの意見陳述が行われて結審した。判決は、来年(2007年)2月23日。被告人らは全員無罪を訴えた。

 本件で被告人らは捜査機関から虚偽自白を強要され、そのほか様々な非道い仕打ちを受けて、挙げ句の果てに虚偽自白をした。このような取調べ経過が過酷なものであったのは容易に想像がつく。捜査権力によって作られた冤罪と同じプロセスを辿っている。
 この鹿児島県議選違反事件に直接関連する国家賠償請求事件も起こされている。この事件の捜査のあり方が極めて異常だったことを雄弁に物語っている。
 このような常軌を逸した取調べによりなされた自白にはおよそ任意性がないというべきであるが、裁判所は、(虚偽)自白調書を証拠として採用した。が、判決で証拠排除をする可能性は残っている。よく検討して欲しいものだ。万一任意性に疑いがないとしても、信用性については慎重に慎重を重ねてよく吟味して欲しい。

asahi.com:県議選をめぐる公選法違反事件が結審 – マイタウン鹿児島 2006年11月08日
 03年の県議選をめぐる公選法違反事件の公判が7日、結審した。弁護側は最終弁論で、捜査段階で容疑を認めた6被告の自白調書の信用性がないと改めて主張し、「事件は警察・検察の見込み捜査によってでっち上げられた、全くの冤罪」と訴えた。起訴された12人の被告は「真実はひとつ」と、来年2月23日の判決日への期待を語った。
 検察側の立証のよりどころは、犯行を供述した6被告の自白調書のみ。弁護側は自白調書の信用性について(1)被告にアリバイが成立する(2)自白に不自然な変遷がある(3)自白を裏付ける直接的な客観的証拠がない――ことなどを挙げ、無罪を主張した。
 弁護側は、買収会合を主催し、現金を配って投票を依頼したとされる中山信一被告(61)は、1回目の会合があったとされる03年2月8日午後7時半ごろから同8時半ごろまでの間は、中学時代の同窓会に出席していたと主張。同窓会は同7時から同10時ごろまであり、「中座した」とする検察側の見方に対して「犯行場所とされる藤元いち子被告(52)宅がある懐集落を往復し、買収会合に出れば2時間かかる」として、「物理的に不可能」と述べた。
 自白の変遷については、03年4月30日から同5月7日までの間、容疑を認めた5被告が供述した買収会合の回数や金額が数度変わった後に、同一時期に一致したことを指摘。「捜査官の誘導、偽計、肉体的・心理的抑圧で強引に合わされた」とした。
また、捜査側が中山被告個人や会社の預金通帳などを押収しても、買収金の出どころが見つけられなかったほか、受け取った金の使い道についても自白を裏付ける物証がないことを挙げ、「客観的証拠は全くない」と述べた。
 検察側は論告求刑でアリバイについて「中山被告の支援者が証言し、信用できない」としたが、具体的な立証はなかった。自白についても「変遷したが一貫して買収会合を供述していた」と述べたものの、物証への言及はなかった。
この日の結審を受け、鹿児島地検は「コメントは出さない」、県警捜査2課は「公判中なのでコメントできない」としている。
◆「真実の声届いた」 被告12人、「無罪を確信」
「私は無罪です」
「お金なんかもらっていない。信じてください」
 およそ4時間に及ぶ弁護側の最終弁論が終わり、谷敏行裁判長に意見を求められた12人の被告は、力を込めてそれぞれの潔白を訴えた。
「金は配っていないし、会合もやっていない。全く身に覚えがない」。買収会合の主催者とされた中山信一被告(61)は谷裁判長に向かい、したためたメモを一気に読み上げた。「早く公正な無罪判決で真実を明らかにしてください」
 395日間勾留(こう・りゅう)されても否認し続けた中山被告は結審後、「逮捕から約3年半は長かったけれど、無罪を確信している」と語り、時折笑顔を見せた。「こういう事件を二度と起こしてはいけない」と話し、取り調べの可視化実現を訴えた。
 3回の買収会合で計21万円を受け取ったとして、懲役10カ月を求刑されている永山トメ子被告(76)は言葉を選びながら、訥々(とつ・とつ)と思いを法廷に響かせた。「会合になんか行ってないのに逮捕され、底なしの泥沼に落とされた。警察は私の人生をズタズタにした。このままでは人生を終われない。どうか罪を晴らしてください」。法廷を出ると「真実はひとつ。裁判所にも真実の声が届いたと思っている」と期待を込めた。
 4回の会合で計26万円を受け取ったとして懲役10カ月を求刑されている山下邦雄被告(76)は「小さい頃、警察官は偉いと教わったのに全く違う。うそばかりついている。無罪判決が出るまでは平常心に戻れない」と目に涙をためていた。