取調べ可視化 最前線

「おまえには黙秘権はあっても否認権はないんじゃ」

 被疑者ノートに記載された取調べ担当警察官の暴言。この手の暴言は決して特殊なものではない。取調べの際に虚偽自白を獲得するための常套手段である。
 被疑者ノートと弁護活動の成果により虚偽自白に到らなかった。何よりである。

逮捕の作業員を釈放 野洲の強盗殺人 証拠集まらず:京都新聞電子版

 滋賀県野洲市のJR野洲駅前の公衆トイレで昨年6月、同市冨波乙、無職石田勝さん=当時(82)=が襲われて死亡し、現金が奪われた事件で、大津地検は10日、強盗殺人の疑いで、滋賀県警に逮捕された土木作業員の笠井庸生さん(57)=京都府宇治市槙島町=を処分保留のまま釈放した。大津地検の梅田正樹次席検事は「20日間の拘置期限内に、公判請求するだけの証拠が集まらなかった」とした。
 梅田次席検事は捜査については「容疑性はあり、逮捕状や拘置の請求で、裁判所のチェックは受けている」と問題はなかったとの見方を示した。
 笠井さんは一貫して、「(事件の)その日は会社の寮にいたので自分は一切、関係ない。野洲駅には行ったこともない」と否認していた。
 県警の調べでは、笠井さんは昨年6月30日午後2時半ごろ、野洲市のJR野洲駅北口前の公衆トイレで、石田さんの首を後ろからロープのようなもので絞めて倒し、胸や腹をけるなどして殺害し、現金2万8000円を奪ったとされる。今年7月21日に逮捕された。
 笠井さんが、事件時間帯に目撃された不審な男の似顔絵と似ていたことから、容疑者として浮上した。犯行の目撃情報などから逮捕に踏み切ったが、指紋や凶器など直接的に犯人に結びつく物的証拠はなかった。
 滋賀県警捜査一課の伊藤實課長は「地検の判断で現時点でのコメントは控えたい。捜査は継続する」と談話を出した。

■「冤罪防げた」 弁護人会見
 笠井庸生さんの処分保留での釈放を受け、弁護人の玉木昌美弁護士と永芳明弁護士は10日夜、大津市内で会見を開き「冤罪(えんざい)事件を防ぐことができた」と喜んだ。
 2人は、笠井さんが逮捕された3日後から毎日、拘置先の守山署を訪れ接見した。取り調べの内容をメモする「被疑者ノート」を差し入れ、捜査側が自白を強要するため暴力的な言動をしていないか、チェックした。
 ノートには「おまえには黙秘権はあっても否認権はないんじゃ」など、実際に受けた言葉が書かれていた。
 永芳弁護士は県警の取り調べについて「拘置中の取り調べは密室で、暴力を加えられても立証できない。ビデオ撮影も録音もない今の日本のシステムは異常だ」と、警鐘を鳴らした。

JR野洲強盗殺人、逮捕の男性を処分保留のまま釈放 : ニュース : 関西発 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

 滋賀県野洲市のJR野洲駅のトイレで昨年6月、同市内の無職石田勝さん(当時82歳)が殺害され、現金が奪われた事件で、大津地検は10日、強盗殺人容疑で逮捕された京都府宇治市の土木作業員の男性(57)を処分保留のまま釈放した。大津地検の梅田正樹・次席検事は「現段階では公判を維持できる証拠を集められなかった。今後は警察とも協議し、任意で捜査を継続する」と話している。
 男性は昨年6月30日午後2時30分ごろ、同駅北口の公衆トイレ内で、石田さんの首をロープのようなもので絞めるなどして殺害、約2万8000円を奪った疑いで、今年7月21日に逮捕された。
 県警は、複数の目撃証言を基に作った似顔絵から男性を割り出し、犯行を告白するのを聞いたとする男性の知人の証言も得られたことなどから、逮捕に踏み切った。
 ところが、物証はなく、男性は「身に覚えがない」と容疑を一貫して否認。先月30日にあった拘置理由開示の法廷でも「野洲駅には行っていないし、事件とは関係がない」と無実を訴えていた。
 男性の釈放について、県警の伊藤實・捜査1課長は「警察としては現段階でのコメントは差し控えたい。ただし、今後も捜査は継続していく」とした。
 一方、男性の弁護人の玉木昌美弁護士らは10日午後9時半から、大津市内の法律事務所で記者会見。玉木弁護士は「捜査側は確たる証拠もなく身柄を拘束し、自白するよう強要した許されない人権侵害。速やかに不起訴処分にするよう求める」と述べた。
(2007年8月11日 読売新聞)