取調べ可視化 最前線

警察官作成の取調べメモは開示の対象になる~最高裁

 最高裁第3小法廷(裁判長堀籠幸男、藤田宙靖、那須弘平、田原睦夫、近藤崇晴)は、平成19年12月25日、証拠開示命令請求棄却決定に対する即時抗告決定に対する特別抗告事件において、警察官が取調べの過程で作成した取調べメモが開示の対象になる判断を下した。
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 公判前整理手続及び期日間整理手続における証拠開示制度は,争点整理と証拠調べを有効かつ効率的に行うためのものであり,このような証拠開示制度の趣旨にかんがみれば,刑訴法316条の26第1項の証拠開示命令の対象となる証拠は,必ずしも検察官が現に保管している証拠に限られず,当該事件の捜査の過程で作成され,又は入手した書面等であって,公務員が職務上現に保管し,かつ,検察官において入手が容易なものを含むと解するのが相当である。

 公務員がその職務の過程で作成するメモについては,専ら自己が使用するために作成したもので,他に見せたり提出することを全く想定していないものがあることは所論のとおりであり,これを証拠開示命令の対象とするのが相当でないことも所論のとおりである。しかしながら,犯罪捜査規範13条は,「警察官は,捜査を行うに当り,当該事件の公判の審理に証人として出頭する場合を考慮し,および将来の捜査に資するため,その経過その他参考となるべき事項を明細に記録しておかなければならない。」と規定しており,警察官が被疑者の取調べを行った場合には,同条により備忘録を作成し,これを保管しておくべきものとしているのであるから,取調警察官が,同条に基づき作成した備忘録であって,取調べの経過その他参考となるべき事項が記録され,捜査機関において保管されている書面は,個人的メモの域を超え,捜査関係の公文書ということができる。これに該当する備忘録については,当該事件の公判審理において,当該取調べ状況に関する証拠調べが行われる場合には,証拠開示の対象となり得るものと解するのが相当である。

 取調べ過程の録画・録音は、検察庁で一部試行がなされているものの、警察庁は「絶対にしない」と言明している。取調べ過程は、録画・録音による立証が端的でわかりやすい。この点をとらえて、刑事訴訟規則第198条の4(取調べの状況に関する立証)の規定はまさに録画・録音という立証方法を検察官がとるべき現時点での最善のプラクティスと考え定められた。したがって、録画・録音がなければ、取調べ過程を明らかにするのに効果的な資料をもって検察官が立証しなければならないのは上記刑訴規則からの当然の帰結である。

 警察官が取調べ過程でメモを作成するのは一般的である。いやむしろ取調べの過程で通常作成される文書といってよい。録画・録音しないから、聴取した内容を明確に記憶にとどめておこうとすればメモを作成するよりほかない。メモといっても、手書きのものから手書きのものをワープロで整理したものまで、様々なものがある。なお、ワープロで入力しておくと後日取調べ状況報告書や供述調書を作成する際に便宜でもある。また、このようなメモは共犯者の取調べにも活用される。
 いずれにせよ、メモは取調べ過程での供述内容に基づいて作成されるから、メモの記載内容から取調べ過程を推認することは十分可能になる。

 最高裁の判断は、刑訴規則の規定から当然の帰結であるし、メモの作成経過に鑑みも当然の判断である。
 取調べ可視化の流れは「うねり」になりつつあるように思われるが、今般の最高裁の判断はさらに大きな「うねり」へと発展させるものであろう。
 捜査機関が取調べ過程の録画・録音を実施しなければならないというのは当然のことなのである。

 警察庁の有識者懇談会でこの最高裁の判断を無視したり歪曲・矮小化したり、といったことがないことを期待したい。

警察官取り調べメモは開示対象 最高裁が初判断 – MSN産経ニュース
時事ドットコム:取り調べメモ開示を命令=「手持ち証拠に限らず」-整理手続きで初判断・最高裁
警察官の取り調べメモも公文書、最高裁が開示命令 : 社会 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)