取調べ可視化 最前線

検察官による自白強要

 報道によれば、大阪地裁(森宏司裁判長)は、2006年10月17日、「検事は違法な方法で自白を求め、人格権を侵害した」と原告側主張を認め、国側に計77万円の支払いを命じたとのこと。

高知地検検事が自白強要 国に賠償命令 高知新聞

検事が自白迫り妻に圧力、国に損害賠償命令 大阪地裁 朝日新聞

検事の自白強要は違法…大阪地裁が国に賠償命令 読売新聞

検事の不当発言で賠償命令 「妻通じ自白強要」認定 秋田魁新報

被告の妻に検事が自白説得を迫る、国に賠償命令 読売新聞

検事の自白強要を認定、国に賠償命令 TBS

 以下、報道を引用するが、判決の決め手は「録音テープ」。捜査機関は、こんなことをやりたいから、やっていることがばれるとマズイから、取り調べ全過程の録画録音に反対しているとしか思えない。検察庁での一定の事件の取り調べのうち、検察官の裁量で録画・録音を実施すると発表したが、問題のないケースのみ録画録音するのではないかとの疑念を払拭できない。捜査機関に対する信頼確保のためには、取り調べ全過程の録画録音を実施するよりほかないと思う。

夫の自白説得へ検事が妻に圧力は違法…大阪地裁 : ニュース : 関西発 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

 卓球の指導中に女児の体に触ったとして強制わいせつ罪に問われ、高松高裁で無罪判決が確定した高知市の会社員竹内真一郎さん(48)とその妻八恵(やえ)さん(44)が、「1審公判中、担当検事から妻を呼び出され、罪を認めるよう迫られるなどして精神的苦痛を受けた」として、国に慰謝料など440万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が17日、大阪地裁であった。森宏司裁判長は「検事は妻に圧迫感を与えており、当時被告だった竹内さんに、妻を通じて間接的に自白を求めた違法行為で、夫婦の人格権を侵害した」などと認定し、国に慰謝料など77万円の支払いを命じた。

 判決によると、竹内さんは2002年4月に小学校で卓球の指導をしていた女児(当時10歳)にわいせつな行為をしたとして起訴された。1審・高知地裁で公判中の同年11月、担当検事が八恵さんを高知地検に呼び出し、「否認していると、刑務所に入ることになる」などと繰り返し、罪を認めるように竹内さんを説得することを求めた。

 八恵さんはやりとりを録音テープで隠しどりし、検事の発言をそのまま夫に伝えた。

  03年3月の1審判決は有罪だったが、04年6月の2審・高松高裁は「被害女児の証言には信用性が薄い」などとして逆転無罪を言い渡し、確定した。

  この日の判決は、このテープを基に判断。森裁判長は「否認を貫くことが、竹内さんにとって不利益なことと誤信させる内容だった」と担当検事の行為を違法と認定した。

  小暮輝信・高知地検次席検事の話「主張が認められず、誠に遺憾。関係機関と相談して適切に対応したい」

◆「実刑になる恐怖感あった」

  「検事との裏取引と感じ、応じなければ、実刑になるという恐怖感があった。この判決で、胸を張って生きていくことができる」。判決後、会見した八恵さんは涙ぐみ、傍らの真一郎さんも「当時は妻も私も検事に恐怖感を感じていた。うれしい判決で胸が晴れた」と安堵(あんど)の表情を見せた。

 八恵さんは、検事の執拗(しつよう)な要求に一時は、「(夫が)認めた方がいいのかも」とさえ考えたという。「私の話を全く聞いてくれなかった。これが国家権力を持っている人かと腹が立ち、とにかく悔しかった」と検察側を強く批判した。

 判決の決め手は、八恵さんが担当検事との約20分間にわたるやり取りを隠しどりした録音テープだった。竹内さんが卓球指導していたチームの保護者らに八恵さんが相談。保護者らが不審に思い、八恵さんに「ちゃんと話を聞くように」と勧めていた。検事の主な発言は次の通り。

担当検事 「僕ははっきり言って、本人が否定したままでいっても、全く構わないです。そうしたら刑務所入るだけなんで」

「このままだったら、刑務所に入ることになるんですよ」

八恵さん 「夫にどういうふうに言えばいいんです」

担当検事 「だから、僕にそういうふうに言われたって言えばいいんじゃないですか」

「あなたははなから(夫が)やっていないと信じている。そういう態度が本人を苦しめているんだと思いますよ」

八恵さん 「私が夫を信じたばかりに夫を苦しめている、と」

担当検事 「本人がやったということは、自分が一番よくわかってるはずじゃないですか」

「認めていれば刑務所に入ることもないし、保釈もあったかもしれない」

◆権力かさに脅し

  井戸田侃(あきら)・立命館大名誉教授(刑事法)の話

 「被告の夫婦関係を利用した捜査手法は権力をかさに着た脅しともいえる違法な行為だ。もし、妻が隠しどりした録音テープが存在しなかったら、検察の行為は闇に葬られたかもしれない。現在、最高検が、容疑者に対する取り調べの可視化(録音・録画)の効果を検証しているが、今後は、参考人の事情聴取での導入も検討課題になるのではないか」

(2006年10月18日 読売新聞)